ひいおばあちゃんの包丁

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山菜を取って帰る道を歩いていた。 木々の間から太陽の光が差し込んで、道を照らす。 蝉や鳥の鳴き声が聞きながら、心地よい風が汗ばんだ肌を通り抜ける。 私にとっては、当たり前となった真夏の昼下がりの景色。 しばらく行けば、住んでいる村への入口が見えてくる。 それまで続く小道は私のお気に入りの場所だ。村人の誰もが知っている道だが、この時間は通る人はほとんどいない。自然が作り出す特別な景色を自分が独り占めしているような気持ちになる。 のんびり歩いているも男の人が道の真ん中に立っていたのに気がついた。彼はグレーの着物を身につけた。着物は銀色で描かれた牡丹の黒い帯で占められていで、彼にとても似合っていた。見知らぬ男の人だと不思議に思い、彼の近くまで歩いていく。彼は木々で覆っている空を見上げていた。 何を見ているのか、私も空を見上げるが木々の間から青空が広がっているだけだった。 声をかけようと思ってもう少し彼に近づくと、突然彼の瞳から涙が流れていた。 私は驚いて立ち止まる。 彼の瞳からあふれる涙が頬をつたって、地面に落ちていく。 声をかけるタイミングを失った私は後退りすると、枯れ葉を踏んでしまった。 彼は驚いて、こちらを見る。すると、濡れた瞳がよりいっそう大きく丸くなる。 (…なんか、気まずいのですが) ひとまず、私は強引に口角を上げ、笑いかけたのだった。
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