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集中してデッキを構築していると、背中からぎゅうっと抱きしめられた。
「どしたの」
「俺のこと放ったらかしにしてる………」
いやいやいや。その主張はおかしい。デュエルしようっつったのは七生だろ。しかも俺は七生がこっち向くまで耐えたのに。そっとしといてやったのに。
振り向くと、拗ねて唇を尖らせる七生が可愛い。いつもより可愛い。ホシノゲンに見えないくらい可愛い。
何だろうこれは、と思ったけど、多分アレだ。童心に返っていた効果に違いない。
俺にとって七生は最高の兄ちゃんだった。一緒に遊んでくれて、宿題手伝ってくれて。いつもいつも、俺に優しい面倒見のいい兄ちゃんだった。その七生が離れて行った時の悲しみとか、ゲイ(本当はバイだったが)だと知った時の衝撃とか、なのに俺を選んでくれない(と思っていた)切なさとか。
幼い頃からここ最近までの出来事がブワーッと走馬灯のように駆け巡って、ただただ、七生は狡い、と思った。
「ワガママ」
「うん……晃介といると、やっぱり俺、ダメ人間になるみたい……」
「デュエルは?」
「また後で」
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