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いくら懐かしくて嬉しくても、そんなに眺めなくてもいいと思う。何時間も俺を放置して。ずーっと背中を向けたままで。
もし今火事になったら、七生は俺よりこの段ボールを担いで逃げそうだなーと思うとすんごい悲しい。
「晃介ー」
「なに?」
やっと俺に視線を向けてくれた。嬉しい。今日は一緒に買い物に行きたい。蒸し暑くなって来たし綿毛布買いたい。ネットショッピングでもいいけど、七生とお出掛けしたい。ドライブしたい。
「デュエルしようぜ」
「……………」
七生とのデュエル。一体何年振りだオイ。七生は自分の場にいそいそとブラマジがプリントされたプレイマットを敷き、俺にもエレメンタルヒーローのマットを勧めて来るが必要ない。寧ろそんなの敷いたら邪魔くさい。
「晃介何デッキ使う?やっぱヒーロー?」
七生は絶対マジシャンデッキを譲らない。自分が他のデッキを使う時もぜーったい貸してくれなかった。そしてずらりと並んだ同じ形のデッキケース。子どもの七生が精一杯丁寧に書いた字が可愛い。む……これは暗黒の中世デッキ。漢字がなんかおかしい。七生は黒とか熊とか熟とか、部首が『れんが』の漢字のバランスを取るのが苦手な子だったと見受けられる。
「え、なに、アンティークギア使う気?」
「いや、字の乱れが可愛くて」
「笑うな。真面目に選べ」
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