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児童生徒が学年別に並び、表彰式が行われた。
今年は全てのクラスが目標を達成し、それぞれに1枚ずつ賞状が授与されることになった。
「1年1組。目標、120回。記録、174回。おめでとうございます!」
校長の声が響く。グラウンドが、暖かい拍手に包まれた。各学年の記録が順に読み上げられ、その度に歓声と拍手が起こった。
「各クラスの代表者は1人、前に出てください」
そう促され、百華が振り返って私を見た。
いいよと言ってあげたいけれど、今後彼女は何枚も、自力で賞状を勝ち取っていくだろう。
私は百華を手のひらで制し、列の一番前まで走って小さなおかっぱ頭に声をかけた。
「ひなの!」
肩を軽く押して促すと、ひなのは驚いた顔で振り向いた。私の顔と、クラスメイトの顔を見渡した。
私も一緒に見回したけれど、不満そうな顔の子は1人もいない。みんな、ひなのが賞状を受け取ることを認めてくれた。
ひなのは細い足で校長の前に歩み出ると、1年1組の賞状を受け取った。肘から手首にかけて、赤い擦り傷ができている。転んだ時にできたのだろう。
3月生まれの、たった6歳の女の子が、泣きもせずによくがんばった。
クラスで一番小さいひなの。
結局、1回も跳べなかったひなの。
それでも、諦めずに縄に飛び込んでいった。転んでも引っかかっても、少しでも早く次のディエゴを跳ばせようと急いで場所をあけた。自分にできることを、精一杯がんばった。
みんなはそれがわかったから、誰もひなのを悪く言わなかった。
来年は、きっと跳べる。
私は確信していた。
来年の今頃、私はここにはいない。2年生になったひなのが長縄を跳ぶ姿を見られないことは残念だけれど、日本の空の下できっとみんなを応援するからね。
174回という大記録が書かれた賞状は、クラスの全員が一生懸命がんばった証。
きっといつまでも、みんなの心に誇らしい記憶として残ってくれるだろう。
私も忘れない。教師になってよかったって、心の底から思ったよ。
ありがとう! スーパー1年生!!
【了】
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