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当日は、中米らしい濃い青空の広がる晴天だった。
朝はまだ肌寒く、体操服の上にジャージを着込んだ児童生徒がグラウンドに集まっている。
競技は2回に分けて行われ、1年生は後半に跳ぶ。開会式と準備体操の後、2、4、6年と中学2年生はクラス毎にグラウンドに広がり、競技スペースを確保した。
「各学年、用意」
教頭の号令で、離れた場所に陣取った4本の長縄が大きな弧を描く。
笛の音が鳴り響き、各学年の一番手が、それぞれ一斉に縄に飛び込んだ。
私は1年生の児童と固まってグラウンドに座り、4年生の競技を見ていた。昨年担任した子ども達だ。
男性の担任が回す長縄は、驚くほど速く力強い。縄を縮め、ロスを極限まで排除した小さな輪の中を、かつての教え子達が背中をかがめながらハイスピードで跳んで行く。まるで、28人の児童が1本のベルトコンベアになったかような、滑らかなループ。
新しい担任のもとで団結し、練習を重ねたらしい彼らの姿に、少しの嫉妬と寂寥感を覚えた。
競技終了を告げる鋭い笛の音が響き、各学年から嬌声があがる。どうやら全ての学年が目標を達成したようだ。
4年生の何人かは、私に向けてVサインと笑顔を見せてくれた。302回という記録は、昨年を大きく上回っている。1年間をともに過ごした、かわいい教え子たち。
でも、負けられない。
振り向くと、私のスーパー1年生達は、すでジャージを脱いで準備を始めていた。2年生の縄を回していた西先生が走って来る。
円陣を組んだ小さな背中の後ろから、私も手を伸ばした。私と西先生以外は、みんなもみじのように小さく柔らかな手だ。
「スーパー1年生!」
百華の音頭に合わせ
「がんばるぞーー!!」
みんなで一斉に、25の拳を青空に突き上げた。
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