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ある日、世界中から100円硬貨が消えた。一番初めに気付いたのは日付が変わった直後、0時00分から数秒たった頃に自販機の売り上げを回収していたタバコ屋のおっちゃんだった。いつも通り鍵を回して自販機を開け、小銭が入っている箱を回収し、袋に流し込んだ。ふと、いつもならジャラジャラと音を立てるところが静かに、文字にするならジャッぐらいの音しかしなかったことに気づき、袋の中を覗くと茶色の10円硬貨、真ん中に穴が空いている50円硬貨が見える中、表面に桜が咲いているあいつが見当たらない。明るいところで袋の中身をぶちまけて確認したが、やはりいない。一応紙幣の方も確認したが問題はなかった。タチの悪い奴に100円玉だけ盗まれたか。頭頂部の風通しがかなり良くなってきているおっちゃんは一人で悪態をつきながら、携帯で110番にかけた。それから30分後には、”100円強盗”の通報が回線がパンクするほど、警察に寄せられた。
初めの通報から1週間が経ったが、100円強盗の犯人は一向に捕まらない。突然の100円喪失騒動は世間を賑わせ、各局のワイドショーはこぞってこの話題を取り上げた。組織犯罪なのか単独犯なのか、そもそも本当に盗まれたのか。何かしらの科学的要素で、ニッケルと白銅が蒸発し消えたという科学者がいれば、宇宙からの使者が資源調達のために持っていったと騒ぐ者もいた。そんな中、日本銀行役職員の男が霞ヶ関の財務省庁舎に呼び出された。
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