症例:魔力吸収による発熱

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症例:魔力吸収による発熱

 さながら今の俺は吸引力の変わらない ただ一人の魔力タンクか。ふざけんな。 病院からの帰り道、人間の世界で聞いた 宣伝を思い出しつつ歩く。  この病気で死ぬことはない。ただ魔力は 立派にエネルギーであるから、常に消費 し続けないと発熱じゃすまなくなる。  どうなるかって?まず体が魔力に適応 しようとしてキャパを拡げようとする。だが 人間の形で収まる魔力は限界がある。いくら キャパを拡げたとしても、だ。  ならばどうなるか。俺の体はキャパと共に 肥大化し、最終的にはバカデカイ魔物に メタモルフォーゼだ!なんてこった!!!  俺はどうやら早期発見出来たようで、 今は吸収を抑える魔法をかけ続けている。 俺が吸収するのは周囲の魔力だから、俺の 周りのやつらが常に貧血状態みたいな感じに なるのを防ぐためだ。  でもこれ一部の医者しかかけられねぇんだ よな…なんて、ぼーっと考えていたから だろうか。前から来たやつを避けようとも せず、思いっきりぶつかってしまった。  「おわっ、と!?」  思わず風を操作して転倒を防ぐが、相手は よほど鈍くさ…じゃなくて焦ったのか、 後頭部をゴチン!と言わせつつ転んだ。 うわ、痛そう…。  「じゃねぇよ俺加害者!大丈夫ですか!」  急いで抱き起こすと、その腕の中から 普通の2倍くらいもある猫が飛び出した。  「ナァアア!」  「あぁ!?なんだよ魔物使いか!?」  その人をとりあえず適当なとこに 寄りかからせ、急いで後を追う。  魔物使いとは、文字通り魔物を使役して いる魔法使いのことだ。大抵のやつは興味 本意で従えていて魔物自体も温厚なものが 多いが…  ごく稀に、とんでもなく凶悪なやつを 従えて平気で街を歩くというバカ野郎が いる。あいつがもしそのバカ野郎ならあの 猫、とんでもねぇ危険生物ってことになる!  「おいそこの猫…種類なんだわからん! 取り敢えず止まれぇええ!」  「?ナァン!」  猫、停止。  「止まるんかぁああい!!」  俺は勢いそのままに猫に突っ込んだ。
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