100回目の汚れつちまつた純情

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 今日こそはついに、コイツに唇を奪われるのか。観念して、小鳥遊の腕の中で瞳を閉じた。  だが、その瞬間はいつまでたっても来なかった。 「…………」  そろっと瞳を開けると、うつ伏せになって、小鳥遊は畳の上に転がっている。ぐうぐうとアホみたいに寝息をたてている。 「コイツ、本当に、……ムカつくな」  よだれをたらして眠る男前な顔を、軽くつねってやった。うううんと、不快そうに眉間に皺を寄せていたが、復讐とばかりに、小鳥遊は中原の膝ににじり寄ってきて、勝手に膝の上で、次は仰向けに眠りだしたのだ。 「重てーわ! このバカはいつもいつも!」  そう、いつもこうなのである。  小鳥遊が女にフラれるのも100回目だが、酔っぱらって中原にキスを迫ってきて、しかしギリギリのところで、中原の膝枕で寝落ちするのも100回目なのだ。  そして目を覚ましたら、毎回、何も覚えていないのだ。またかと思いながら、次こそは何か変わるんじゃないかと期待してしまうのに、結果はいつも同じで、ウンザリする。  ぐうぐうと、大口を開け、幸せそうに眠る小鳥遊の額を手のひらでぺちっと叩いてやる。  こんなひどい男はどこにもいないと思う。こんな男に惚れられて付き合う羽目になる女の子たちも可哀想だが、自分も充分、弄ばれている気がする。  毎回、思うのだ。  もう、コイツを好きでいるのはやめよう、と。  だけどそれでも、どうしても、諦めることができない。希望なんて、一ミリもないのに、どうしてもコイツを嫌いになることはできないのだ。 「……」  眠り続ける小鳥遊に、そっと唇を近づける。いっそこっそり奪ってやろうとして、だけどできなくてやめるのも100回目だ。  次はもう、我慢できずに触れてしまうかもしれない。  そうなっても、文句は言うなよと心の中で悪態をついた。  
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