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だが、そう上手くは運ばなかった。二人の計画はあっさりと見破られていた。
男がいないとされる時間帯にショウが忍び込み、翔を招き入れた。しかし、二人で金庫を開けた時、突然現れた10数人の男達に囲まれてしまった。
ショウは隙を見て何とか逃げ出せたが、捕まってしまった翔は、狼の群れに放たれた羊のように動けなくなっていた。
一度逃げだしたショウは、なんとか翔を助けようと男の家に戻った。家には地下室があり、翔はそこいた。見張りは一名、そして、虫の息で倒れている翔。
ショウは背後から見張りに近づき失神させると、翔に駆け寄った。
「おい、翔。翔、大丈夫か」
呼びかけで翔は微かに目を開けた。彼は腫れあがったひどい顔で無理やりに微笑んだ。
「ショウ、頼む……俺の部屋に……あの時計を……お袋に渡してくれ。住所は……中にメモがある」
「分かった。とりあえずここから逃げよう」
肩を貸そうとするが、翔は既に起き上がることも出来ない。何とか抱え上げようとするが、うまくいかない。その時だった。
「やっぱり戻って来やがったな」
男達が現れて、ショウを囲む。
「今度こそ逃がすなよ」
彼らはナイフをショウの目の前に出し構えた。
「最後に何か言いたいことは?」
ニヤニヤ笑いながら男の一人が尋ねる。
自分の運動神経がいくら良いとはいえ、さすがにこの状況では多勢に無勢だ。
「そうだな」
ショウは横たわる翔を視界に収めて深呼吸する。彼は既に動かなかった。
(ゴメン、翔。僕は逃げる。まだ彼女に会えていないんだ)
「言いたいことなんかないよ!」
言うと同時に、敵が持っていたナイフを蹴り上げ床に落とす。そして、ものすごい早さで走り出し、外に出た。
「逃げたぞ!」
「あっちだ!」
男達はどこまでも追いかけてくる。追っての数もどんどん増えてくる。こうやって追われるのは何度目だろう。
あの島を出てから、気がつけばいつも何かに追われていた。ショウは追っ手をまきながら、翔の家に戻った。腕時計を握りしめ、また走りだす。
冬が終わり、春はもう目の前まで来ている頃の事だった。
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