100個目の物語

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100個目の物語

 ――おや? もう読み終わったのかい? 随分と早いねぇ。……もしかしてだが飛ばし飛ばしで読んだりした、とか? あ、違う? ごめんよ疑ったりして。……頼むからそんなに睨まないでくれ。  それでどうだい、九十九冊を読み終えた訳だが感想とかはあるかな? なに、今まで読んできたどの物語とも違って引き込まれていって楽しかったって? それは良かったよ。君が特に気に入った物語はどれかな? あぁこれか、いいねぇ。絆の素晴らしさがとても美しく感じるよ。  え? 私のお気に入りが知りたいのかい? そうだねぇ……、これかな。今まで見たことの無い世界観がとてもおすすめできるね。  ――そうだ、君に一つお願いをしてもいいかな? ……用件しだいだって? オーケーわかった、聞いてくれ。ここにある九十九冊の本は全部ここに迷い込んできた人達が書いたものなんだ。今までの物語を読み、新しい物語を書いていく。どれもとても素晴らしい出会いだった、そしてここまで来たんだ。君は百人目の訪問者だ、この本に記念すべき百作目を書いて欲しいんだ。  ……僕には読むことしか出来ないって? 大丈夫、そう難しいもんじゃないよ。君が今まで思ってきたことや感じてきたこと、それを書くだけでもいいんだ。君はさっき引き込まれるって言っていただろ? それは書いてきた人達の人生そのものなんだよ、それだけでも我々は引き込まれていくんだ。そう、君の人生もとても魅力的だ。  ……え? 書いてる間に手が疲れてしまうって? それも大丈夫、ちょっと頭の中で念じるだけで字がページに現れてくるから気にすることも無い。どういう原理でなっているんだって? ……私もわからないけれど、便利だから気にしてないな! ……うん、よく面倒くさそうな人って言われるよ……。 ********************  ――お? 出来たのか?! また随分と早いねぇ、もしかして君才能があるんじゃないのかい? ……ふんふん……きみさぁ、よくお調子者って言われたりしない? だからそう睨むなって。……それで、まるで飛び付くようで悪いんだけれども…………早速読んでみたいんだがいいかな? あ、いいのかい? ありがとう! それじゃあ、今回はどんな物語に出会えるんだろうか…………。
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