百害

1/4
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

百害

 全く、嫌な話を聞いたものだ。  お陰で、妙に足音が気になって仕方がない。  鵙の鳴き声が、やけにうるさい、うるさい、うるさい……!  耳を塞げば今度は、彦八の陰鬱な声が甦る。 「――事の発端はね、大したことじゃあございません。酒の上での口論……まあ、よくありますことで」  そう。そうとも、よくあることだ。 「今となっちゃあ、斬った方も斬られた方も、口論の元が何だったのかなんて、覚えてなんぞおりませんでしょう」  そして、ここは異なっている。  俺は覚えている。ようく、覚えているぞ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!