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百年目
それからしばらくは、何事も無かった。
しかし、ある夜――
博打で大負けし、やけ酒をあおっての帰り道。
不意にまた、あの足音が、聞こえてきた。
ひたひた、ひたひた――
気のせいだろうか?
ひたひた、ひたひた――
酔っているせいだろうか?
ひたひた、ひたひた――
いや、とてもそうとは思えない。
これでも剣術だけは相当やったのだし、幽霊だの化け物だのなぞ信じない。
ひたひた、ひたひた――
足音は、相変わらず自分のそれと、ぴったりと重なっている。
だが今日は、次第に近付いてくるようなのだ。
ひたひた、ひたひた、ひたひた、ひたひた――
大崎はついに、ぱっと振り返った。
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