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「そうね。でもそれだと、家のお母さんが許す訳ないじゃない。お母さんの家は資産家なのよ。それで勘当されたら困るわ」
「そうだな。だから、お金があると思って俺はお前と結婚したんだ」
「お母さんに春生を引き取って貰おうかしら。私のお兄さん、結婚するつもり無さそうだもの。以前、お兄さんの養子に春生を譲ってくれないかって言われた事があるの」
「それはいいアイデアだな」
僕のお母さんのお兄さんは変わり者で、結婚相手がいないのだ。俊一伯父さんと呼んでいる。
遊びに行っても俊一叔父さんの部屋は入れて貰った事がない。子供の入る場所ではないと言われるのだ。一度こっそり中を覗いてしまった時に見つかって、狂ったように酷く叩かれた思い出がある。
伯父さんの子供に?
僕は足元が崩れていくような気がした。
それにお婆ちゃんはお金持ちだが、厳しい人だ。以前漫画本を読んでいたら、怒られて難しい本を渡された記憶がある。
「漫画本なんか読んでいたら立派な大人になれないわよ。貴方のお母さんだって一応有名な大学を卒業しているのよ。嫌ね。春生ったら父親に似たのかしら」
お祖母ちゃんの言葉が頭の中で反復する。
僕が聞いているのを知らずにお母さんは話を続ける。
「春生を養子にあげる代わりにお金を貰おうかしら」
「俺にも分けろよそのお金」
「駄目よ。そうそう。あなたの彼女はお金持ちだって聞いたわよ。慰謝料たんまり貰うからね」
「所詮世の中は金だな」
「そうね」
それを聞いているうちに僕は眠くなって寝てしまった。朝起きるとお母さんがやけに優しかった。
きっと、僕の事をお祖母ちゃんにあげる事にしたんだ。
僕は涙が出そうになった。
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