お金

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お母さんは僕の事を堕ろすつもりだったと言った。 けれど、時期を逃してしまい仕方なく産んだのだとも。 そうして、何か問題が起きる度に、 ああ。あの時堕ろしておけば良かった。と呟いて後悔する。 堕ろすって何だろう。 僕だって好きで産まれてきた訳ではない。 そう言うとお母さんは 「あら。春生はどうして産まれてきたか知らないの?あのね精子は卵子にたどり着くまで、数億分の一の確率なのよ。春生はその中から勝ち抜いて卵子に到着してきたの。よっぽど私の子供に産まれてきたかったに違いないじゃない」と言う。 言っている意味が解らないが、僕は競争に勝ち抜いて産まれてきたようだ。 その時の記憶が無い。皆覚えているものなのだろうか。 そうしてお母さんは僕を産みたくなかったのだろか。 だが、僕がお母さんが好きなのは事実だ。お父さんの事も大好きである。 僕は寝るのが早い。だが今日はなかなか寝る事が出来なかった。 その日、お母さんとお父さんが夜中に喧嘩しているのを聞いてしまった。 「別れても、子供はいらないからね」 「何を言っているんだ。普通、女親が引き取るんだろう。俺も子供はいらないよ。彼女が子供連れは嫌だと言っているんだ。再婚の邪魔になる」 二人は別れるのかな。 僕の事いらないんだ。 二人が別れるのは辛いけれど、それが幸せならば仕方がない、だが引っ越しは嫌だなと思った。小学校に好きな女の子がいるからである。 「施設に預けるって手もあるだろう」 施設?施設ってどんな所だろう。僕はそこへ行くのか?やっぱり引っ越ししなくてはいけないのかな。
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