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「近所迷惑?カッコ悪い?どの口がそんなんゆうのかな。どの口が…」
彼女がコップを叩きつけるように、テーブルに置いた。右手で俺の唇をつまんで引っ張る。
「いはい…いはいっへ…はなひへ…」
嫁は唇を思い切り引っ張ってから、ようやく手を離した。
「わたしがどんだけ恥かいたおもてんの。近所の奥さんなんか、私見たら、苦笑いするんやで。『大変ですね』って言われんねんで。たぶん影で、安物のパンツのほうとか言われてんねんで。越路吹雪ぐらい歌わせろや、アホッ」
「うん、そうや。そうやけど、もう夜も遅いし、明日も仕事やし…」
「そうやな。例の彼女と生ラジオやな。楽しみやなあ…めっちゃ楽しみや。そうや、近所の奥さん集めてここで聞こう。あんたのおごりで特上の寿司でもとって、みんなでパンツマンのラジオ聞こう。それでええな?」
「えっ、マジで…」
嫁はまたコップを手に取り、愛の讃歌をうたいはじめた。
「あなたーの燃える手でー、私のパンツを抱きしめてー、被って嗅いで変態でいてねー…」
「わかった、わかった、寿司特上。全然オッケー。四人前。注文しとく。注文しとくから、歌はもうやめて、夜遅いから…」
「私、バッテラ好きやから、バッテラ多めで頼んどいてや。近所の奥さんにメールせな」
嫁は携帯を持ってダイニングを離れた。
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