第1章

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ガチャ、 実験室前方の角、理科準備室に繋がる扉が開いた音がして、ザワザワしていた空気がピタリ、緊張感に包まれる。 私の心臓も、跳ねた。 そこから出てきた人物はムス、とした表情で私たちを一瞥すると、黒板前の教卓まで行くとバサリ、資料を置いた。 「日直、揃ってる?」 出席簿に目を落としながら、低く落とされた声。 「あ、は、はい。全員揃ってます」 悪いことなど、何もしてないのに。 その威圧感で日直の彼は、声が上ずっていた。 「ん」 小さくくぐもった声で返事すると、チャイムが始めた。 一段とピリッとした空間で、日直の号令で挨拶をする。 私たちの着席を確認し、教卓に長い両手を着くと。 「何人か知った顔もあるけど―――。 ハジメマシテ。生物担当の冴島(さえじま)です」 つ、と顔を上げた先生が、よく通る声で自己紹介した。
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