第1章

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第1章

春、4月。 先生と出逢ってから、2回目の春が、来た。 「郁(かおる)ちゃん、どうかした?」 階段の踊り場でふと、足を止めた私を采女(あやめ)が、上から不思議そうに振り返った。 「あ、ううん、なんでもない」 全面ガラス張りの窓から見える飛行機雲に向けていた視線を、采女に戻して微笑み返す。 階段の半分近くまで上っていた采女に追いつき、並んで歩を進める。 「緊張してる?」 「そ、そんなことないよっ!」 どこか楽しげな瞳で私を覗き込む采女に首を振りながら答えるけど、内心ちょっと、ドキドキしている。 だって……。 階段を上りきって角を折れれば。 そこは 「生物・化学実験室」 大好きな冴島(さえじま)先生の、聖地だから。
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