姫が戦う理由

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「時に政宗様。まさかとは思いですが、この進路ですと真田と闘り合うおつもりで?」 「まぁな。傍らに居る忍にはさくらを見せたくねぇが仕方ねぇ」 「…猿飛には十二分釘を指しておいた方が宜しいですな」 微かな微笑を浮かべながら、小十郎はさらりと主君に言った。 甲斐 国境 他軍が領地に入った事を配下から知らされた迷彩服の忍…武田軍忍隊長の猿飛佐助は忍らしい駆けで、主君に伝えに向かっていた。 「真田の大将、伊達軍が武田領地に侵入。こっちに向かって来てるぜ」 「誠か佐助」 「物見をしていた部下からの情報だし、先ず間違いないね」 佐助からの伝令に、彼の主…武田軍総大将真田幸村が、暫し思考を巡らせた。 好敵手との戦いは、勿論二つ返事で承諾する。 「佐助、政宗殿達をこの先の広野に誘い出せるか?」 「それぐらいお安い御用さ」 そう言い残してから闇に消えた佐助を見送ってから、幸村は自室から出て兵に伝えに向かった。 「(しっかし…何かあの竜の旦那達以外に女の子が居たような気がするけど、気のせいかな)」 佐助は分身を作り、伊達軍を誘うように向かわせてから考えていたが、自分の気のせいと考えた。 武田軍領地に入った政宗は、何と無く広野に誘われているなといち早く気付いた。 「小十郎、猿の相手は任せるぜ?」 「心得ております」 主君が愛馬を止まらせたのを見てから、小十郎は部下達にも止まるよう指示した。 後方からさくらは、遠くを真っ直ぐ見据えながら何かを考えていた。 「(炎を操る奴は嫌いだ…あの日を思い出しちまう)」 幼い頃に城を襲った敵--松永--を最も忌み嫌うさくらは、両親達の仇を討つ為、其まで政宗以外の人に心を許してはならないと決めている。
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