姫が戦う理由

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何と無くさくらの殺気に気付いた政宗は、ちらりと気付かれないよう彼女を気遣うように一瞥してから、幸村を見据えた。 「おい真田幸村、炎を納めな」 「な、何故で御座るか?貴殿とは手加減無用で刃を交えたい故!」 「あいつの殺気に気付かねぇのか?あいつは炎にちょいとしたトラウマが有るんだよ」 政宗から聞いた言葉に、幸村は少し離れた場所に居る、馬上のさくらを見れば嫌でも自分に殺気を放っている事に気が付いた。 「(何と…某の炎に反応してしまったで御座るか…)」 幸村は内心で思いながら、密かに軽い身震いをした。 しかし、彼女の殺気に臆して此処で退くような幸村ではない。 好敵手との雌雄は楽しいが、彼女は政宗の傍に居るべきでは無いと、幸村の直感が囁いていた。 不意に政宗の六爪が幸村目掛けて振り下ろされる。 それに気付いた幸村は、寸でのところで凶刃となり掛けた刃を危なげに二槍で防いだ。 「てめぇ…今さくらを見て何を思いやがった?」 「そ、某は何も思っておらぬ故…!」 明らかに怒っている様子の政宗からの言葉に、幸村は目をパチクリさせたが、決して怯まず好敵手を真っ直ぐ見た。 「アンタが何を思おうが知った事じゃねぇが、さくらを傷付けるつもりなら容赦なく竜の爪痕をその身に刻むからな」 彼女に一目惚れをしてしまい、このまま自分の傍に居て欲しいと想っているからこそ、政宗は何があっても絶対に彼女を護ると決めているのだ。
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