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渋々承諾したさくらからの言葉に、政宗は取り敢えず一安心したのか、頭を撫でてやった。
「傍に居てやるから、お前は安心して休んどけ」
小十郎と部下には見張りを命じ、自分はさくらを守るようにした。
戦等が一段落したら、彼女に想いを告げると決めた政宗は、彼女の手を離さないようにした。
政宗に手を握られ少しは安心出来るが、完全には気を抜けなかった。
通方から自分を狙いに来ている敵の気配に気付いているからかも知れない…。
「夜明けには出発するからな」
「馬が疲弊し始めてるのにか?」
「そんなにヤワじゃねぇよ。だから心配すんな」
彼女は自分の事よりも、政宗達の事を気にしたのか、政宗はさくらからの言葉に小さくフッと笑ってから頭を撫でてやった。
「…そうか」
頭を撫でられつつ聞いた言葉に、さくらはそちらに顔を向けながら呟くように言った。
今は相手の姿が見えないが、自分を安心させようとしているのだろうと言う事だけは分かった。
その頃、甲斐武田屋敷
幸村は戦場で殺気を放っていたさくらが気になっていた。
「珍しいね?大将が考え事するなんてさ」
視察から戻ってきた佐助からの言葉に、幸村はそちらを見て肩を竦めた。
「うむ…あの女子の事が少々気になってな」
「ちょいと俺様なりに調べてみたけど、子供の頃は姫だったみたいだぜ?」
「何と…真か」
「俺様嘘は付かないし」
幸村からの問い掛けに、佐助は頭の後ろで手を組ながら言った。
彼が嘘を付くのは必要な時だけらしい…。
「元姫だったと言う事は、その女子が居た城は如何されたのだ?」
「どういう経緯かはまだ調べ中だけど、松永に攻められたみたいだよ」
「…そうであったか…」
佐助からの報告に、幸村はやっと自分に向けられていた殺気の意味に気付いた。
家族と居場所を幼い頃に失い、帰る場所が無くなった彼女はきっと悲しんだに違いない…。
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