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彼女の過去
夜が近いのか、風が少しだけ冷たくなってきた。
「中には入れそうだな」
城内へと入る場所は大丈夫そうに見えた為、政宗はさくらの手を握ってから中に入った。
政宗と共に城内へと入ったさくらは何も言わず、幼少期の自分を懐かしむように思い出していた。
11年前
さくらがまだ子供の頃、小国とは言え大好きな両親とその兵士達に囲まれ毎日が幸せで楽しかった。
その頃からさくらには瞳術が備わっていると。父親がいち早く気付いた。
「あの子には何一つ不自由無く過ごして欲しいな」
「そうね…戦乱の世に生まれた以上、幸せに暮らすのは難しいけど」
父の名は夜一、母の名は小夜。
二人は戦略結婚だったが、お互いが惹かれ合いそのまま夫婦となった。
庭先で蝶を見付け、それを追い掛ける幼少のさくらを二人揃って微笑ましく見ながら会話をしていた。
「ただ…一つ気になる事が有ってね」
「気になる事?」
「あぁ…さくらには俺が昔使っていた瞳術が備わっていてるんだ」
「…そうなの…不思議ね」
少し複雑そうな表情をしながら、夜一は小夜に打ち明けた。
夜一からの言葉に、小夜は心配そうにさくらを見ながら呟いた。
「いつでも引き出せるようにはするつもりだけど、あの子にはまだ殺意を持たせる訳にはいかないよ」
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