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その洋菓子店は地域の老舗の1つだった。開店当初は客も多く、売上も上々であったが、地域の人口が減った今は客足も遠のくばかり。数年前に代替わりし、今は2代目の店主が経営を任されていたものの、経営は厳しくなる一方だった。
そんな中、菓子を卸している得意先のスーパーの社長が店を訪れ、悪い知らせを告げた。
「すまないが、うちも売上が悪くてね。来月からはお宅との取引を中止させてほしい」
「そんな…。うちとは長年の付き合いじゃないですか。なんとか続けてくれませんか」
「そう言われてもね。すまない、悪く思わないでくれ」
社長は深々と頭を下げて謝ると、ばつが悪そうな様子で去っていった。
店主は肩を落とした。あのスーパーはうちの得意先の中でも売上が多い先だった。あそことの取引が終わってしまっては、いよいよ経営が危なくなる…。
さらに、追い打ちをかけるようなことがあった。その日の午後、借入先の銀行員が店を訪れたのである。
「今月分の返済が遅れているようですが…」
「すみません、もう少し待ってもらえませんか」
店主は平謝りをして、返済の延滞を依頼した。銀行員は申し出を受け入れたものの、次はもう難しいかもしれないと伝えた。そして、急いで支度を済ませると、足早に帰っていった。
もう借入金を返す余裕もない。しかし、売上をあげるにも集客力もなければ、商品開発をする資金もない…。どうにも手詰まりだ。一体どうしたものか。
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