優しいあなたに

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入学式で隣の席にたまたま座ったユウをみた時には絶対に自分とは世界が違う人だと思っていた。 今は黒髪で長さもすっきりと短めで学生らしい服装をしているがその時は全くの別人だった。 肩までの長さのブロンドヘアを一つにまとめて 全身真っ白なパンツスーツを着ていた。スーツの中に着ていたシャツは同じく白色でボタンを胸元が見えるまで外していた。 耳や胸元に大きめの金のアクセサリーをつけて そしてブラウンの大きなサングラスをかけていた。 ものすごく派手でキラキラしている。 どう見てもカタギの人間ではない。 圧倒されて声も出なかった。 その時、私の視線を感じたのか、ユウはチラッとこちらを見た。 そして上からの目線でフッと笑った。 体ががゾクッと震えた。 「ひっ」 殺される。 その時後ろからため息と共に感嘆の声が聞こえた。 「すごく、エレガント」 と。 はい?   その言葉で体の呪縛が解けてその声の方に目をやる。 二人組の女子がうっとりしてこちらをみている。 いや、こちらというより彼女達の視線の先は私の隣に座る派手なヤンキーだ。 これがエレガントなの? このキラキラが? 同じ人間でも見る人によってこうも印象は違うものなのか。 私にとって『すれまくっ てる』と感じるものは『洗練されている』とも言い換え可能なのか。 「都会って恐ろしいな」 口から思わず声が出てしまった。 後にその話をした時、ユウは吹き出して笑った。 「確かに金髪に上下白スーツでチャラチャラしてたかもね でもあのスーツ、50万はしたのにさ、と。 下品に見えちゃうなんてあんまりな話だよね」
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