三時に来る報せ

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 俺がこうなってしまった実情を説明しないと、この先理解が進まないと思う。  まず、リニモアとは「リ・ニア・モーション・アクター」の略称で、ざっくり言えばVTuberを映像合成出来る擬似俳優ソフトの事だ。俺の動きを撮影した動画をリニモアのキャラに置換して編集すれば、ドラマ動画も可能だ。最新のソフトは凄くて、陰影さえ調整すればリアルと合成しても違和感の無い動画も撮影出来る。  ある時期からリニモアを使ったドラマ動画がネットで流行り、その波はテレビドラマにまで押し寄せた。ある時に海外でヒットしてからは日本でもその手法が真似られたのが数年前の話。  俺のような名もない俳優は舞台へと追いやられているが、そこに元有名俳優だった舞台俳優がリニモアを使い出してから均衡へと向かっている。やはり餅は餅屋しかない。  現在では俺やトウカのような売れない舞台俳優でもリニモアを使ったオーディションに、自らの分身であるマイリニモアを受けさせられるようになった。  リアルの俳優よりもギャラの面でコストが抑えられるのでWin-Winな制作側の都合もある。特に映画業界では。 「どーせ子供向けのアニメだろ?」  腹いせに毒づく。アニメ業界もまたリニモアの恩恵に預かっているそうだ。詳しくは知らないが。 「うんにゃ、教育番組だよ」 「メアはそうだよな。そっちが向いてるもんな」  トウカのメアは擬人化猫のリニモア。トウカは大の猫好きで、オフは猫と戯れて休日が終わるくらいだとか。メアはトウカの飼い猫の動きを取り込んだ身体能力もあるが、猫のような愛くるしさも兼ね備えている。置換する前の撮影風景を想像…しないでおこう。
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