愚者の黄金

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わたしは小学生の時、この学校に通っていた。 わたしの家と小学校は遠くて、歩いて通うのに一時間もかかった。それは、わたしがのろまなのも十分理由になっていて、わたしがランドセルを背負うと、皆よりも、二倍も三倍もたどり着くのに時間が必要だった。 「これねぇ、金だよ。さとこちゃん」 同じクラスの、明日香(あすか)ちゃんという女の子が、わたしに教えてくれた。 「内緒だよ、これバケツ一杯持って帰ったら、高く売れるんだよ」 明日香ちゃんは、地面に落ちていた金の石を、わたしの手のひらに乗せてくれた。明日香ちゃんはいつもきれいな服を着て、髪もさらさらで、いい匂いがするすてきな女の子だ。 「そうだよさとこちゃん、私達バケツ取ってきてあげる!」 明日香ちゃんといつも一緒に居る、かわいくてすてきな女の子たちも、口々に言った。 「そうなんだ!」 校庭に金が落ちてるなんて、そんないいことがあるなんて! わたしはとても驚いた。 「じゃあ沢山集めて、家に持って帰るよ!」 「そうだよ、きっと家の人も喜ぶよ!」 明日香ちゃんはにっこり笑って、私に学校のバケツを貸してくれた。 わたしはたくさん金を集めて、お父さんを喜ばせたいと思った。
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