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オレの心
俺、高遠颯斗。
高校時代から、時給が高額すぎる六本木の高級カフェでバイトをしている平凡で貧乏な大学1年生だ。
そんな俺に最近、非日常的なことが1つだけ加わった。
それは先日、今をときめく超売れっ子ハリウッド俳優龍ヶ崎翔琉の家の合鍵を受け取ってしまったことだ。
まだ1度も自ら鍵を回したことは無いが、超有名人の家の合鍵。
無くしたら切腹ものだ、と自身に言い訳し、実家の鍵と共にその合鍵も肌身離さず日々持ち歩いている。
そんな超多忙すぎる有名人翔琉に「助けて欲しい」と唐突に言われ、今宵、何故だか高級レストランへと俺は連れて来られていた。
「っていうか、だいたいこんな高級なお店で何もあなたを“助ける”ことなんて無かったですけど。……もしかして、俺に嘘ついたんですか?」
ようやく手持ちのお金が無い事実を受け入れることにした俺は、本来であれば座り心地が良いはずの椅子へと罰が悪そうに腰掛けた。
「――だから、最初からココは俺が払うって言ったじゃないか。なのに、颯斗が変に意地張るから」
ニヤニヤしながら俺の困った様子を楽しそうに眺めている男を、思い切り正面から睨み付ける。
「そういう訳には!しかも、給料日後だからお金に少しは余裕があったはず……あ!」
そう言いながら、ふとここ数日の出来事を思い返した。
実は、珍しく色々な大学の飲み会に参加していたのだった。
これは、嫉妬深い翔琉には絶対に言えない事実だけれど。
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