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DAY1
今期放送中の禁断の学園ラブストーリーが4月中にクランクアップし、GW中の5月1日から来年公開予定の主演刑事映画の撮影が始まった。
そのクランクインから、俺は冠婚葬祭で田舎へ帰った翔琉のマネージャー代行として、本当に1週間限定で同行することとなった。
正直、冗談だと思っていたのに。
撮影初日、朝の4時。
「おはようございます」
大学の入学式で1度だけ袖を通しただけのリクルートスーツに身を纏った俺は、実家までドイツ製のSUV車で迎えに来た翔琉へと深々頭を下げる。
本来ならば、マネージャーが運転をしなければならないのだろうが、生憎俺は免許を持っていない。
初日の現場は、翔琉の家の目と鼻の先。
自転車で翔琉の家まで行くと何度も申し出たのだが、「心配だから」その一言で翔琉は都内の外れにある俺の家まで迎えに来てくれたのであった。
翔琉の敏腕マネージャーから引き継いだ、1週間のスケジュールと仕事内容を何度も確認した俺は、事情を説明して翔琉の負担にならないようにバイト先のカフェにでも泊まりこもうかと一瞬考えた。
だが、1週間こちらの都合で休みを貰うのにそんなことはできない、そう思った。
「颯斗、ちょっといいか」
いつも通り、髪をワックスで今時風にヘアアレンジした俺の髪を、車から降りてきた翔琉は唐突に触り始める。
「え?龍ヶ崎様……何するんですか?!」
折角時間を掛けて、できるマネージャー風にキメたはずの髪を大胆に崩し始める翔琉に、俺は激しい戸惑いを感じた。
「よし、これで良いな。あと、これかけておけ」
満足そうな表情で伊達眼鏡を俺へ渡した翔琉は、そのまま運転席へと戻る。
その後を追い、助手席へと渋々乗り込んだ俺は、ルームミラーで自身の髪型が七三分けへと変わっているのに気が付く。
おまけに、黒縁の野暮ったい眼鏡。
いつもとは違うかなりダサい俺に、思わず翔琉へと文句が出てしまう。
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