第10話・決着

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 鉄製のドアを開いた先に広がっていたのは、まさしく宇宙だった。  飛び交う色とりどりのフラッシュライト、ミラーボールからまき散らされる細かな白い光の粒、そして空間さえも激しく震わせるバックミュージック。  柳田悠吾は、そんな宇宙空間で理人が来るのを待っていた。 「何だよ、俺がいるって分かっていたような顔しやがって」  つまらなそうに目を細めて理人を睨む悠吾。始めから自分のことは眼中にないのだと煌夜は悟り、ならばと理人の邪魔にならないよう閉じたドアに背をつけた。 「………」  理人は一言も発さない。ただ目の前の敵を睨み付け、だけどいつでも切り込めるように、悠吾の最初の行動にすぐさま対応できるように、体中の神経を研ぎ澄ませながら構えている。 「……ふ、……」  悠吾が微笑とも溜息ともつかない息を漏らした瞬間、理人が床を蹴り暗闇の宇宙へと飛び込んだ。 「っ──!」  振り上げた拳が的確に悠吾の左頬を捕らえる。鈍い音がして悠吾がよろめいたが、第一撃で体を床へと吹っ飛ばすことはできなかった。  バランスを立て直した悠吾が鋭い拳を理人の腹へと叩き込む──が、素手での殴り合いでは流石に理人の方に分があるようだった。子供の頃から常に守られてきた悠吾と違い、理人は自身の力とその拳で今日までの人生を勝ち取ってきたのだ。  鳩尾の奥へと悠吾の拳が到達するより前に、理人はその腕を制していた。  そのまま頭を仰け反らせ、──勢いよく悠吾の顔面へと頭突きを喰らわせる。 「ぐっ、……ク、ソがぁ……!」  溢れ出る鼻血を押さえながら悠吾が理人から離れた。「いってぇ……」理人自身も赤くなった額を押さえて天を仰いでいる。  煌夜は祈る思いでその光景を見つめていた。素手でのまともな格闘なら理人は負けはしないだろう。だけど悠吾は得体のしれない不気味さを持つ男だ。それに、理人よりもずっと多くの物を強引に手にしてきた。人生において思い通りにならないことなど一度だってなかった。だからこそ許せないのだ、面と向かって刃向かってきた男の存在が。  恐らくは理人も言っていた通り、武器を隠し持っているはずだ。どうにかしてそれを抜くタイミングさえ読めれば──煌夜は少しだけ痛みが引いてきた額へ、今一度意識を集中させる。 「てめぇ、壮真理人。……タダで済むと思ってんじゃねえぞ」 「別に、何とも思ってないけど。アンタが俺を気に入らないように、俺もアンタが気に入らない。ただそれだけだ」 「下っ端の雑魚風情が、調子に乗りやがって」 「だから俺はアンタのグループから出る。それはアンタも認めてたはずだ。……これで対等だろ」 「………」 「柳田悠吾。てめえは絶対に許さねえ」
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