友達

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 そのままの状態で時は過ぎ、なんとなく亜希に話しかけ辛くなってから暫くした頃、珍しく姉からの電話が鳴った。 「もしもし?」 『あぁ俊介?久しぶり、元気だった?』 「うん、元気だよ。姉ちゃんも元気そうだね。で、どうしたの?」 『いやー、それがね、あんた今度の土曜日って忙しいの?』 「んー、いや、全然大丈夫だけど」  本当は亜希と遊ぼう思って三日ほどバイトのシフトを空けたど真ん中の日だったけれど、幸いまだ誘ってはいないし、シフトを組んだのも一か月前、まだ亜希と普通に話せていた頃の話だ。今から誘うにしても、こちらの誘いを断られるのが、それこそデートで…なんて言われるのがどうしても怖くてうまく誘える自信がなかった。 『よかった、じゃあ一日だけ海奈の面倒見てくれない?バイト代、弾むわよ。いつも頑張ってるの知ってるしね、お小遣いあげちゃう』 「おっ、姉ちゃん太っ腹ー。全然いいよ。海奈ちゃん大きくなった?」  海奈、とは姉の子供、所謂姪のことだ。何度か姉の家に遊びに行ったこともあるし、今までにも同じようなことは何度かあったから海奈のことはよく知っている。 『そりゃあね、あんた前に会ったのが正月でしょ?子供の成長は早いわよ』 「そっか、じゃあ土曜日は預けに来てね。俺、家いるから」 『了解。じゃあ、宜しくね』  姉からの電話が切れてすぐ後、メッセージの着信音がなる。姉ちゃん、何か言い忘れたかな、と中を見ると姉からではなく亜希からで 『今度の土曜、俺バイト空いてるけど』  と、少し分かりにくいけれど遊びのお誘いの文章。 「タイミング悪いよ……」  呟きながら返信を打つ。あと五分早ければ亜希と遊んだのに……と、思ったところで、いや、それもないか、と思い直す。姉が困っているとなれば、結局そちらを優先しただろう。それでも、結局遊べなくても、亜希から誘いが来た事実が嬉しかった。 『ごめん、さっき用事入ったとこ。また別の日誘ってくれると嬉しい』 『分かった。悪かったな』  いつもなら無駄に延々と続く会話も、今日はどこか弾まない。亜希の悪かったな、で途切れてしまった会話画面を数秒見つめて、大きくため息にも似た息を吐いて画面の明かりを落として布団に潜り込む。思い悩んでも仕方がない、こんな日は早く寝るに限る。そう思って暗い部屋の中で目を閉じたのに、こんな日に限っていつまで経っても来ない眠気と奮闘した。
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