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第一話 目を疑う
「ああするしかなかったんだよ」
物であふれる部屋の片隅で、司はそう呟いた。
常識では考えられないけれど、彼には一風変わった能力がある。
それに気が付いたのは割と最近のことなのだが、あることで私と司の意見が真っ二つに割れ、しばらくの間無言で睨み合った後に視界から急にいなくなった。
「えっ、司!?」
当惑して辺りをきょろきょろと見回すのだが、彼は一瞬にして跡形もなく姿を消してしまった。
「えっ、何なの!?どこ行っちゃったの?」
不安に支配されていると、私の背後で紬という司の声が聞こえてぎょっとした。
「驚くよな」
パニック状態の私に苦笑いをして見せた。
司の説明によると、彼は自分が存在しない空間を短時間だが作ることができるようなのだ。
「解読不可能な数字が左の手の平に浮かび上がってくるから、最初何かと思ったけど、徐々にあと何回自分が姿を消すことができるのか、わかる数字だった」
「今いくつ?」
司は今は78だが初めは100だったと言った。
そのような面白い能力が私にではなくなぜ司に与えられたのか、どうしても解せない気持ちでいっぱいだった。
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