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「おはよう春樹!・・・って、またそんな眠たそうな顔をして。全く、お前は冬眠明けの熊なのか。」
「熊か・・・。そうしたら冬は確実に冬眠していられる。熊になりたいなあ。そう思わないか。隼人。」
隼人は幼馴染で、とても頼りになる俺の兄みたいな存在だ。昔から、人当たりが良く、リーダー気質で誰にでも好かれる。背も高く、かっこよく、スポーツもでき、頭もよかった。だから、昔からよく女の子にもてていたが、隼人が特定の女の子と付き合っているという話は今まで聞いたことがなかった。昔からバスケットボールが大好きで、昔からバスケ一筋のバスケバカだった。俺もよく付き合わされたが、全く練習相手になれず、いつも迷惑をかけていたが、隼人は嫌な顔一つせず、いつも誘ってくれたのだった。
「お前は本当に穏やかというかぼーっとしているというか。目つきは悪いのにな。今日から高校生になるんだぞ。せっかく普通にしていれば、頭もよくて、顔もそこそこ、背も高い方でまあまあもてそうな感じなんだけどな。」
「もてるのには興味はないなー。興味があるのは睡眠だから、もしまた寝ていたらよろしくな。」
隼人と笑い合いながら言葉を発した瞬間。後ろから背中を押すように心地よい風が校庭に咲き誇る桜餅を散らしていく。春のにおいが自分を包んだその時、その中にまたかすかにあの声が聞こえたような気がした。ふと話をしながら辺りを気にするが特に何もない。
「まあお前らしいといえばお前らしいけどな。ところで部活どこに入るのか決めたのか。」
「・・・ん?ああ、まだ、決めていない。眠りの時間が十分にとれる部活がいいな。」
「そんな部活あるのかよ。まあ、とりあえずは教室に行こうぜ。」
「そうだな。」
いつも気にしすぎているから空耳まで聞こえるようになってしまったのかな。また、辺りを見回すが、何もなく俺は隼人の方にまた顔を戻した。
やっぱり今日のは気のせいか。綺麗な悲しげな声が聞こえた気がしたのだけれど、彼らがちゃんと持ち主の元にいてくれれば問題ない。あまり深く考えるのはやめてまた学校に向かって一歩を踏み出した。
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