シンプル

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「和巳さん……な、泣いてるんですか?」 「泣いてない」 「でも、ちょっと目がうるうるしてましたけど」 一応突っ込んで訊くと、彼はガバッと頭を上げて俺の頬を軽くつねった。 「鈴が泣くからだろ! 泣くなよ、こんな時に!」 「えぇ……?」 こんな時だから辛くて泣いてしまったんだけど。彼は赤い顔のまま、俺の目元にキスしてきた。 「お前に怖い思いさせて、泣かせたいわけじゃない。むしろ笑っててほしいんだ。俺にどんだけ愛されてるのか……ネガティブで、自分を卑下してるお前に分からせるために」 片手は優しく髪を梳く。もう片手は、依然として俺の中に入っている。 「なのに、お前がそんな辛そうにしてたら……俺も、辛いよ。アレだよ、もらい泣きもするよ!」 「そうなんですか……。ごめんなさい」 「そうなんですか、じゃない! 泣くな! 分かった?」 最後の雫を指ですくい取られる。もう視界は鮮明になり、彼の顔がはっきり見えた。 彼の目元も赤かった。 和巳さんは優しい。あと今初めて分かった。俺が思ってる以上に繊細だったんだな……って。 この人なりに色々悩んで、考えてくれてたのかもしれない。 ────申し訳ないけど、どうしようもなく嬉しい。 「嫉妬してもいいよ。ただ、みんな俺を過大評価してるだけだ。俺はそんなできた人間じゃないし、皆一緒で嫉妬もする。……独占欲もある」 「ぁっ!」 ずっと埋め込まれてるだけだった指を緩く動かされて、思わず仰け反る。でも逃げられなくて、結局彼にしがみついた。 「鈴が好き……だから、誰にも奪われたくない。俺だけ見て、俺だけに愛されて、俺だけに抱かれて。俺のものになればいいのに……っ」 耳元で囁かれ、熱い息が中に入ってくる。それだけで身体が反応して脈を打った。指の動きが激しくなるにつれて、前も硬さも持つ。 「……っ!」 熱い性器が、彼の腕に当たる。でもそこを触ってもらうより、やっぱり中に強い刺激を欲した。今だって充分な衝撃で、つま先まで痺れているのに。 やっとのことで手を伸ばして、彼のベルトを掴んだ。 「ください……中に入れて……俺を、めちゃくちゃにして……っ!」 自分も救いようがない。恥も忘れてこんなこと懇願してるんだから。 文字通り、彼にめちゃくちゃにされたかった。
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