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チャックに触れて、再び彼のものを取り出す。そこは自分と同じで、硬度を保っていた。
「……今日はそこまでやるつもりはなかったんだけどな」
和巳さんは少し笑って、額を手でおさえる。
「今欲しい。今じゃなきゃ駄目だ。和巳さんをもっと感じたい……っ」
理性なんてビリビリに破いて叫んだ。これこそ“逃げ”てるんだろう。考えることを放棄している。
こんなにも空っぽだから、皆に見透かされて、幻滅されるんだ。最後に望むことは、この空っぽな心と身体を彼に捧げて、……彼で満たされることだけ。
そしたら、ちょっとお釣りがくるくらい幸せかもしれない。
指が引き抜かれて、彼の性器が解れた入り口に当たる。心臓がバクバクして、息苦しさを感じた。六年前も、こうなることを望んでいたから。
この時を待っていたんだ。
「鈴。ちょっと訊いときたいんだけど」
俺の腰を支えて、彼は息を整える。
溶けそうなほど熱い。自分達の周りだけ酷く気温が上がってるみたいだ。
「俺のこと好き?」
「そんな……好きに決まってる」
顔から火が出そうなほど恥ずかしい。でもいっそ暴いて、明け渡して、本当の自分を見せよう。その方がずっと楽だ。
今まではそれを我慢してきた。彼を傷つけたくなくて、彼に嫌われたくなくて。けど今となっては、もっと早くに話せば良かった気がする。……結局、自滅して彼を傷つけたんだから。
「和巳さんが好きです。ずっと好きな男の人として見てました。貴方と両想いになる想像を、六年も続けてた……!」
あぁ、本当にやばい。絶対引かれちゃう。
羞恥心でまた涙が出そうになってると、不意に顔を隠してる手を引き寄せられた。
「熱烈な告白だね? で最高」
目が合う。彼の眼は、優しく俺を捉えていた。
「じゃあ次のお願い、言うね」
「ま、まだ……?」
あるのか。ドキドキしながら待ってると、和巳さんは楽しそうに口角をあげた。
「俺に愛されてることを、自信持って言って」
掌に口付けを落とし、彼は微笑えむ。反対に、こちらは青ざめた。
「愛されてること? って、何ですか?」
「何でもいいよ。でも思いつく限り全部言って。俺がお前の、どんなところが好きなのか」
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