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はぁ。それってつまり。
───俺の長所を言えってこと?
多分そうだ。でも彼に好かれてるところを上げるなんて、自分自信をべた褒めする流れになってしまう。
「そ、それはちょっと……思いつかないというか」
「ふーん? じゃ、ここでやめていいのかな?」
和巳さんは腰を擦り付けてくる。触れてる部分は彼が足したローションで滑って、溶け合っている。勢いに任せれば、繋がることができてしまうんじゃないか、と思った。
「……っ!」
欲しい。さっきも恥を忍んでお願いしたのに、こんな要求を出してくるなんて彼もちょっと意地悪だ。
でも……どうしよう。下半身が疼いて、熱い。辛くて、何もしなくても揺れてしまう。
「ほら、鈴。我慢は身体に良くないよ」
彼がそれを言える立場なのか分からないけど、手は胸や首筋に回って、いやらしく愛撫してきた。
我慢……できる気がしない。
「か、和巳さんは……」
どんな風に言えばいいんだ……。もう訳分からないけど、快感欲しさに口を開いた。
「俺の……手が好き」
よく、やたら手にキスしてくるから。ちょっと適当過ぎたか……?
「うん、まぁ当てはまる。他は?」
「他は……世話焼きなところが好き。家事をするところ、朝と夜、必ずキスするところが好き」
「まだまだあるよ。ていうか、もっと内面的なところ言ってよ」
「内……っ」
俺の性格で好かれるようなところあるか……!?
もう本当に許してほしかったけど、適当に上げてみた。
「えっと……人の言うことを聞くところ。怒られたら謝るところ。反省と後悔を繰り返すところ」
「ネガティブだなぁ。それ、俺が好きなところだと思う?」
射抜くような視線を突きつけられ、ついたじろぐ。ネガティブなのはは当たり前だ。自分の長所をひたすら上げるなんて恥ずかしい。和巳さんは慣れてるんだろうけど、俺はただの学生だし!
世間一般の長所を言おうものなら、心にも思ってないことをペラペラ話すことになる。
和巳さんに好かれるために、わざと繕っていた部分だって────たくさんあるんだ。
「……かなり抜けてるところ。夢中になると、周りが見えなくなるところ。ちょっとだけ、一途なところ」
俺はとにかく単純で、和巳さんにしか心を寄せられない。
俺の人生を根こそぎかっさらっていったのは彼だ。もう二度と、彼が遠くへ行くところを見たくない。ずっとずっと一緒にいたい。
これが、自分を手放した顛末だ。
「和巳さんが帰ってくるのを六年待ち続けた。和巳さんが大好きで大好きで仕方ないところ……!」
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