444人が本棚に入れています
本棚に追加
肌がぶつかり合う音が、リズミカルに聞こえる。いやらしい水音も、甘すぎて胸焼けしそうな科白も。鼓膜を突き刺して、自分という人間を丸裸にした。
「俺達だけの時間と、場所だ。……俺以外の誰かを思い浮かべてたら許さないからね、鈴」
「んあっ!」
彼は優しすぎる笑顔を浮かべて、俺の中を掻き乱す。
気持ちよすぎて辛い。腹の中が彼でいっぱいになってることが嬉しくて、頭までおかしくなった。
「和巳さん、もっと……っ」
「もっと、何?」
「もっと、来て……和巳さんのこと愛してるから……! 俺を、愛して……!」
平常心に戻ったら発狂しそうな告白。感情のまま張り叫ぶと、満足そうな声が聞こえた。
「もう俺に愛されてないなんて言えないね?」
速すぎる律動。視界が点滅して、真っ暗になる。
────最後まで彼の熱を感じながら、意識は途切れた。
「ふぅ。鈴?」
和巳は額の汗を腕で拭い、目の前で組み伏せている青年を見下ろした。鈴鳴は気を失い、あられもない姿で横たわっている。
「あちゃ……ちょっとやり過ぎちゃったか」
慌てて彼から自身のものを抜き取り、ティッシュを取って自分と彼の身体を拭く。しかし身体全体が汗にまみれ、酷く不快な状態だった。
彼が起きたらシャワーを浴びよう。ついでに身体を洗ってあげよう。そう誓った和巳はひとりでうんうんと頷いた。
「ごめんな、鈴」
未だ肩で呼吸してる彼の唇を塞いで、隣に寝転ぶ。
鈴鳴は、大人……とは言い難い。童顔だし、華奢だし、黙ってればまだ高校生でも通る。
だがそれは外見の話。肝心なのは精神面だが、心だって不安定だ。
でもそれは自分限定かもしれない。鈴鳴は自分といる時だけどこか雰囲気が違う。しっかりしようと気を張って、常に何かに怯えてる。
その理由の背景には、どうしても親や親戚の影がある。彼は自分を比べて「嫉妬」と形容していたけど、裏を返せば「恐怖」だ。認めてもらえない不安と、疎外感。大人に対する猜疑心に支配されている。
鈴鳴が大人になりきれないのは、彼の周りにいる大人が彼を子ども扱いしているからかもしれない。
初めて会った人間とは普通に接することができても、実家に帰れば萎縮して「子ども」に返る。
それを自分がどうにかできるだろうか。
自信はないけど、諦める気もない。いつか必ず変えてみせる。大切で大好きな彼だから。
もう一度寝てる彼の頬にキスをして、胸の中に抱き寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!