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翌日、私たちは長崎の中心街と出島の辺りをプラプラと散策してから、長崎駅に向かった。駅で昼食用の弁当と両親や友人へのお土産を買い込み、博多行きの特急電車に乗り込む。
いつの間に買ったのか、電車に乗るなり、芳樹がビールを二本取り出した。そして、そのうちの一本を私にくれる。
「これからの僕たちの前途を祝して乾杯しよう」
「うん」
プシュっという小気味よい音が二つ響く。
「麗子、乾杯」
「乾杯」
私たちは缶と缶を軽くぶつけて、キンキンに冷えたビールを喉に流し込む。幸せな気分デ飲むビールは格別に美味しい。芳樹も私も思わず笑顔になった。
電車は諫早駅を過ぎ、やがて有明海側へと出た。ビールを二本ずつ飲んだ私たちは、ほろ酔い気分で車窓の景色を眺める。駅を一つ通過するごとに、結婚に近づいていくような気がして、何となく顔が緩んでしまう。
「麗子、そんなにニヤニヤしてどうしたの?」
「なんでもないよ」
「またまた。何かエッチなことでも想像してたんじゃないの?」
芳樹が揶揄うように言う。
「もう、そんなことないもん」
私はわざとに頬を膨らませ、怒ったふりをする。芳樹は笑いながら、そんな私の頭を優しく撫でてくれた。私も思わず、へへへっと笑ってしまう。
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