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本好きの二人
大学生のシオリは、昔から、本を読み始めると周りの音がほとんど聞こえなくなってしまう悪い癖がある。歩きスマホならぬ、歩き読書も習慣付いているから危険だ。
そんな彼女だが、高校時代に一度、本から遠ざかったことがある。
憧れの先輩に「文学少女は苦手なんだよな」と言われた。好意を寄せていた男子に「本の虫かよ」と呆れられた。クラスの女子から「本と二股かけるから嫌われるのよ」と揶揄された。
シオリは、それまで足繁く通っていた本屋にも図書館にも近づかなくなった。立ち寄っているところを誰かに見られ、指を差されて笑われるのが堪えられなかったのだ。
本から遠ざかった彼女は、人と話を合わせるためにテレビや映画へ目を向ける。自室の書棚から抜かれた本は、段ボール箱に詰め込まれて押し入れの一番奥にしまい込まれた。
大学に入ってから、サークルで、ドラマとかアイドルの話題が大好きな同い年のミキと知り合った。内気なシオリと活発なミキは、性格がまるで対照的。でも、同じ趣味で盛り上がれば、そんなことは関係ない。
ある日、二人が高校時代の思い出話をしていると、シオリは本好きが露呈してイヤな思いをした過去をミキに話し始め、今でも心に傷を負っていると漏らした。
すると、ミキが俄然やる気モードでセラピーに乗り出した。悩める本好きを見捨てるわけにはいかないと。
なぜなら、彼女は自らを活字中毒者と名乗るほどの乱読家だったのである。
この時から、二人は、ドラマもアイドルもそっちのけに、本の話題で盛り上がるようになり、親友となった。
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