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堪えきれずに落とした涙
フォークで小さくカットして食べていたチーズケーキの横に、フォークが置かれた。紅茶が冷えてきた。
スマホの画面でページをめくる動き以外、体が動かなくなった。ずっと上下に動いていた眼球が止まり、潤んできた。
読書をしながら時折そんなシオリの様子を窺っていたミキは、のめり込みぶりが想定以上なのを見て、からかう言葉を飲み込み、口角を軽く引き上げる。
ミキの様子が目に入らないシオリは、鼻をすすり、続きを読み始めるも、胸にこみ上げてくるものを感じて視界が滲む。
なぜ、ミクの手紙が戻ってきたのか? なぜ、巧がやつれていたのか? どうして、彼は彼女にあんな態度を取ったのか?
巧の家庭の事情を知れば知るほど、読み手もミクと同じ気持ちになっていく。
彼を心の痛手から救おうとする彼女のように、自分も手を差し伸べたくなる。
徐々にミクへ心を開いていく巧。
そして、桜坂でのラストシーン。ミクの告白に、巧の答えは――。
読み終えたシオリは、頬を流れる涙を拭わなかった。
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