AI作家の実力

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AI作家の実力

 シオリに話しかける頃合いを見計らっていたミキが、スマホをスッと机の上に置いた。 「その顔、感動したぁって?」  そう問いかけて、2センチ角のケーキの欠片にフォークを突き刺す。シオリは、手の甲で素速く涙を拭う。 「不覚にも――って感じ」 「最初はベタな展開でも、最後は感動のラストへ持っていくでしょ?」  自分の心境の変化を見透かされたが、案外ミキもそうなのかもしれない。でも、ここで素直に認めると、負けを認めた気分になる。 「まぁ……ね」 「……いまいち――じゃなかったよね?」  それは頬の涙を見ればバレることだ。そこは認めざるを得ない。 「それは、ね」 「素直じゃないなぁ」  チーズケーキを頬張り目を細めるミキは、カップを持ち上げた。咀嚼してダージリンを飲み干すと、 「人工知能がどういう仕掛けでこういう小説を書き上げるのか、わかんないけど、ちゃんとツボを押さえている」  カップを置いた彼女は、ニヤッと笑う。 「そう。なんか、ツボを押さえているってか、()()()()()()調()()()()()()()。そう思うんだよね」  ミキに見習ってカップを持ち上げたシオリは、 「どうやって?」  そう言いながら、ぬるいダージリンで唇を湿らせる。その仕草に目をやるミキは、スマホを指差した。 「こうやって」 「こう――って?」 「注文を取って」  ミキの小出しの情報に、シオリは推理を巡らし、ほどなくして結論を得た。 「ああ、なるほど。何を注文して、どう評価しているか。お客の動向を分析して――」 「動向って鋭いね。これ、おそらくだけど、読むスピードやら、ページの行きつ戻りつまで監視しているような気がする」 「監視?」 「レコメンド機能があるでしょ? これ、結構、くすぐられるんだよね。何でも似たような小説をずらずらと並べてくる、お馬鹿なレコメンドじゃない。心をつかまれる率、かなり高いんだよ」  ミキは、人差し指を立てた。 「だから、相当読者の行動を記録して分析しているとしか思えないんだ。個人ごとにね」
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