地下にある本屋

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地下にある本屋

 ミキがシオリを連れてやってきたのは、電気街の一角にある雑居ビルの地下。  本屋だから、古書店の集まる街だろうと思ったが、予想外の場所にシオリは目を丸くして辺りを見渡す。  狭くて薄汚れた階段、剥がれた張り紙や重ね貼りした張り紙で汚れた壁、昼光色の電球。階段を降りきって、途中で引き返したくなる薄暗い通路を進むと、突き当たりに鉄の扉が見えた。  扉の右に、3×4に配置された0から9までの数値と*と#のボタンがある装置が見える。プッシュ式電話機のダイアルボタンにそっくり。受話器があれば、完全に電話機だ。  ミキは、慣れた手つきで素速くボタンを押す。押している回数から考えて、自分の携帯番号ではないかとシオリが思っていると、扉のドアノブ辺りで「カチャッ」と鍵を開ける音がした。  鍵をかけている本屋を怪しんでいると、ギィーッと蝶番がきしむ音がして扉が手前に押し開かれ、背の高い青年の顔がヒョイと現れた。  明るめの茶髪がゆるふわマッシュで、西洋人のような顔立ち。黒い双眸は東洋人を思わせるが、ハーフなのか。首から下の、黒い蝶ネクタイ、純白のシャツ、それにフォーマルのような黒い洋服の一部が見えているが、それらから察するに、執事の格好のようだ。
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