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するとまた大砲の音が響き始めた。
オレンジ頭の男は「 くそ、今回は長引いてんな 」
と舌打ちをして私の手を取り走り出す。
まだふらつく足を必死に動かし後ろを振り向くと、海賊のような服を着た人達が船をよじ登って来るのが目に入り背筋が凍てつく。
「 ねえ、う、後ろ 」
揺れるオレンジ色の頭が少しこちらを向いた。
そしてニコッと可愛らしい笑顔を浮かべて直ぐに
前を向き直す。
「 大丈夫、あいつが来た 」
いつのまにか標準語に戻っているその声は弾んでいて、再度振り向いた私の目に移るのは綺麗な黒髪をなびかせた男だった。
「 ここの住民は皆んな地下のシェルターに隠れてんねん。そこなら安全や。急ぐで。気張って走りや 」
手を引かれ走る速度が上がり前を向く寸前、彼方と呼ばれるその男と目が合った気がした。
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