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それから数日、葬儀やら何やらで忙しい日が続いた。泣いている暇などないくらいに忙しい日々だった。まだ遠方から帰省した遺族が帰らない内にと、祖母の遺品を整理することにした。
「 おじいちゃん、おばあちゃんの部屋、片付けとくね 」
「 あゝ 」
お見合いや、家の人が決めた相手と結婚することが当たり前だった時代に大恋愛の末結婚した祖父と祖母。祖父はあの電子音の響いた日から、抜け殻のようになってしまった。今も縁側に座り外をぼーっと眺めていて、私の言葉に振り向きもせず力なく返事をするだけ。
「 寒いから 」
と祖父の部屋から半纏を持ってきて肩に掛ける。
「 あゝ 」
やはり祖父はそう短く返すだけだった。
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