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「 結衣、おじいちゃんまだあの調子?」
祖母の部屋に向かうと、既に遺品の整理は始まっており、従姉妹の瑞樹(みずき)姉ちゃんが手際よくダンボールを組み立てながら私に問い掛けた。
「 うん。何言っても、あゝ。って答えるだけ 」
私も綺麗に掃除されている畳の上に腰を下ろして作業に取り掛かる。まだ祖母の匂いが残っており、気を抜いたら涙が出そうになるので少し上を向く。
「 そう。おじいちゃん、おばあちゃんのこと大好きだったもんね 」
「 うん 」
しんみりとした雰囲気の中、時計の規則正しい秒針の音だけが響く。
「 どれも、捨てられないね 」
「 そうだね。全部、おばあちゃんの思い出が残ったものだもんね 」
出てきた服や小物、昔のアルバムを懐かしみながら手に取り、ダンボールに分けていく。
捨てたくはない、大切なものばかり。
仕分けだけして、しばらくはそのままにしておこうと二人で決めた。
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