アゲラタムを一輪

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アゲラタムを一輪

入り組んだ道を進み、建物の中に入る。その建物の中をまた進み続け、地下につながる入口らしき扉の前にたどり着く。その頃にはすでに私は虫の息で、肩で息をしている状態になっていた。汗ばむ手が離れ、オレンジ頭の男が「よく頑張った」と頭を一撫でしてくれる。 「 俺は今から彼方の方手伝いに行くから、ここからは一人や。下に行ったら合言葉聞かれるさかい、"アゲラタムを一輪"って言うんやで。その中に依子(よりこ)言う女の人が居るから、事情話しとき。力になってくれる筈や 」 そう言い残し走り出すオレンジ頭の男。 「 あの!ありがとう!私は結衣。古谷結衣(ふるやゆい)って言うの 」 先程の彼方という男は黙ったまま背を向けていったのに対し、オレンジ頭の男は笑顔で振り向いてくれた。 「 俺は白(はく)!また後でな、結衣ちゃん 」 白という男はそう言って凄い速さで走り去っていった。私はその後ろ姿に、(頭オレンジなのに、名前は白なんだ)と失礼な事を思いながら頭を下げた。
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