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100日後
「ついにできましたね、博士」
疲労感と達成感の入り混じった顔で助手が私を見た。
「ああ。やっと完成したよ、タイムマシンが」
安堵の息を漏らしながら、私は眼前の木箱に目を向けた。この中にタイムマシンが入っているわけではなく、この木箱自体が私の作り上げたタイムマシンなのだ。もちろん素材は本物の木ではない。木箱風に仕上げてあるだけだ。開発当初には助手から意見されたこともあった。なぜ木箱なのかと。どうせなら映画やマンガのようにもっとかっこいいデザインにすればいいのにと言うことだ。だがそんなことをすれば目立って仕方がない。タイムマシンは過去へも行くのだ。だから例えばスポーツカーを改造したような外観をしていたなら、それを目撃したその時代の人々の概念に影響を与え、歴史を変えてしまう可能性だってある。その点木箱なら安心だ。逆に遠い未来の世界にはなくなっているかもしれないが。
「さて、早速タイムトラベルといこうじゃないか」
タイムマシンの扉を開けてから、
「特別に、助手である君に一番乗りの座を与えよう。さ、乗ってみたまえ」
助手のことだから喜び勇んで飛び乗るだろうと思っていたのだが、彼は猜疑心をあらわにした眼差しをこちらに向けた。
「それは光栄ですけど、まさか博士、僕を実験台に使うおつもりじゃないでしょうね?」
実を言うと、多少そういう意図があったものだから一瞬どきりとした。しかしそれを認めるわけにもいかないので、悟られぬよう鷹揚に否定してみせる。
「そんなことあるわけないだろう。これまで身を粉にして私を助けてくれた君への、せめてもの感謝の気持ちじゃないか。ささ、遠慮せずに早く乗りたまえ」
別に遠慮なんてしてないですけど……とつぶやきながらも、私の強い勧めもあって彼はタイムマシンのシートに滑り込んだ。
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