100日後

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 三ヶ月ほど?つまり100日ということではないのか。100日研究室に戻ってきていないということは、事故を避けるために別の場所に身を潜めることにしたのだろうか。なぜこの研究室じゃだめなのだ。なにか不都合でもあるのだろうか。もしかしたらこれから私は100日後の自分の説得に失敗するのだろうか。だから100日前に戻った私はここではないどこかへ身を潜めることにしたのか?いや、逆に説得が成功するとも考えられる。事故の直前に100日前からやってきた自分のおかげで事故を回避できるとわかったものだから、100日もの間引きこもることなく自由に外出することにしたのかもしれない……。  ええい、ややこしい。あれこれ考えていても埒が明かない。そもそも今はまだ事故が起こる前だし、説得を試みてもいないのだ。とにかくまずは100日後の自分に会わなければ。 「なあ君。100日後の私とは本当に連絡がつかないのか?」  彼は私のことを指差しながら、 「え?じゃあ博士は……」 「そう。私は100日前から来た私だ」 「なんだ。あのときの博士ですか」 「そう。それでこの時間の私なのだが」 「だからわからないんですよ。むしろ博士のほうがご存知じゃないですか?このあと自分がどう行動するのか、考えてみればいいかと」  言われるまでもなく自分の行動を予想してみるが、いくら考えてみても100日もの間避難できる場所には心当たりがなかった。今まで研究一筋に生きてきたものだから、この研究室以外に100日もの間閉じこもれる場所といえば自宅しか思いつかないのだ。 「わからん。だからとりあえず私の家に行ってみるしかないな。万が一部屋にいなくても、どのみち車にはねられるのはマンションの前なのだし、そこで待っていれば、必ずこの時間の私も来るはずだ」 「じゃあ、僕も行きますよ。二人がかりのほうが見つけやすいでしょうし」
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