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「そうかもしれないな。よろしく頼むよ」
我々は私のマンションへと急いだ。
「やっぱり、留守みたいですよ」
インタフォンのボタンを押していた助手が私のほうを振り返った。
「いや、居留守を使う可能性もあるからな、念のため中も見ておこう」
キーホルダーを取り出し開錠する。ドアを開けて靴を脱ぎ、奥へと進んだ。お邪魔しますといって助手があとからついてくる。
二人がかりですべての部屋を見て回ったが、100日後の私の姿はどこにもなかった。いったいどこに行ってしまったというのか。ホテルにでも閉じこもっているのだろうか。そうだとしたら探しようがない。
「こうなったらマンションの前で待っていたほうがよくないですか?」
助手は言いながら窓際へと移動する。そこから通りが見渡せた。その向こうにはコンビニも見えるはずだ。
不意に彼が「あ!」と素っ頓狂な声を上げた。
「あそこにもう一人の博士がいる!」
「なに?」
私も窓際に走る。確かに通りの向こう側の歩道を私が歩いていた。のんきな顔で。
「博士、そろそろ時間ですよ」
助手が私に腕時計を見せた。確かに問題の時刻はすぐそこだ。こうしちゃいられない。
私は脱兎のごとく駆け出した。靴を履くのも忘れて部屋を飛び出し、階段を駆け下りる。足の裏に鈍痛が走るがそんなものにはかまっていられない。マンションのエントランスを飛び出したところで自分の名を呼ぼうとしたが相手はコンビニに入ってしまった。やむなく私もコンビニめがけて走り続け、道路を渡ろうとした瞬間、突然急ブレーキの音が聞こえたかと思うと体に衝撃が走った。
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