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全身が痛い。意識が朦朧とする。
霞みゆく私の視界にはコンビニが映っている。
自動ドアが開き、新聞を手にした助手が出てきた。真っ青な顔で私のほうを見ていたかと思うと、一目散に走り出す。
野次馬が集まってきた。遠くから救急車らしき音が聞こえてくる。
コンビニからもう一人の私が出てきた。ふらふらと頼りない足取りで、助手が走り去ったのと同じ方向へと歩いていった。
なるほど。助手と私が100日後の世界で目撃した事故はこれなのか。100日後の私が車にはねられたのではなく、事故を阻止しようと100日前から来た私がはねられた事故だったのだ。
と言うことは、そもそも事故を回避しようなどと思わなければ、この事故は起こらなかったことにはならないだろうか。
いやそうじゃない。私がここで車にはねられることは、すでに時の流れの上で決定していたことに違いない。時の流れを変えることは絶対に不可能なのだ。だからあの時……私が助手に初めてタイムスリップを勧めた時、何か見えざる大きな力の働きで100日後と言わされたように感じたのは、時の流れが私の意志に働きかけていたということなのだ。私はまんまとそれに乗せられ、事故を目撃し、それを回避しようとここにやってきて事故に遭った。すべてはあらかじめ決まっていたことだった。
「博士、大丈夫ですか?」
これは……さっき私のマンションへ一緒に行ったほうの助手だ。彼は心配そうに私の顔を覗き込むが、それに応える気力はもう残っていない。
そういえば、研究室で彼が言っていたな。私が三ヶ月ほど戻ってこないし連絡も取れないと。つまり私は元の時間には戻れず、このままここで……。
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