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「ちなみに、君はどんな時代へタイムトラベルをしてみたいかね?」
助手はタイムマシンの内部をぐるりと見回しながら、
「別に。行きたい時代なんてありませんよ」
「え?そうなの?」
「はい。博士はあるんですか?」
「もちろんだとも。坂本竜馬の暗殺や本能寺の変のような、歴史上の事件をこの目で見て、その真相を確かめたい」
「じゃあ、博士がお先にどうぞ」
言いながらタイムマシンを降りようとする助手を、「いや、いいよいいよ」と慌てて押しとどめた。
「それならこうしよう。君には私の未来の姿を見てきてもらおうかな。タイムマシンを発明した私が、近い将来どうなっているのか知っておきたい」
「いいですよ。どれくらい先を見てきましょうか?」
「そうだな。100日後にしようかな」
「100日後、ですか?」
助手が怪訝な表情で繰り返したのが気にかかった。
「ん?どうかしたか?」
「いいえ。ただ、どうして100日後なのかと思いまして」
「そりゃ君、ちょうど切りのいい数字じゃないか」
「まあ数字だけ見ればそうですけどね。でも日数なら、一週間後とか、一ヵ月後とか、一年後のほうが、切りがいいように思ったんです。だから100って数字になにか意味があるのかと」
確かに言われてみればそうだ。100日とは約三ヶ月。タイムトラベルするにはどこか中途半端な日数に思える。それなのになぜ私は100日と口に出したのか。なにか見えざる大きな力の働きで言わされたような気がしてきた……。
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