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「あの、博士?」
「ん?なんだ?」
「もう行っていいですか?」
「どこへ?」
「だから100日後へ」
そうだった。妙な妄想をしたがために失念していた。
「もちろんだ。100日後の私の姿、しかと見届けてきてくれ」
「任せてください」
助手は親指を立てて見せると、操作パネルに行き先を打ち込んだ。タイムマシンの扉がゆっくりと閉じ、木箱は眩い光を放ちながら消え去った。
タイムマシンはすぐにもとの場所へと戻ってきた。ゆっくりと開く扉の隙間を押し広げるようにして、助手が中から転がり出てきた。
慌てふためいた様子の彼は、私の足下にすがりつくと、
「大変です、博士」
「なんだ、どうしたのかね?」
「100日後、博士は交通事故に遭いますよ」
「事故だって?」
彼の腕を取って立たせてやる。
「どういうことだ?ちゃんと説明しなさい」
よろけながらも近くのイスに腰掛けた助手は、深刻な表情で私を見上げた。
「100日後、博士はこの研究室にいませんでした。だからマンションに向かったんですよ。博士がお住まいの。でもその前に、その日が本当に今日から100日後なのかを確認しておく必要があると思いましてね。とは言えその辺を歩く人に今日は何年の何月何日だ?なんて聞くわけにもいきませんから、コンビニに入ったんです。ちょうど博士のマンションの向かい側にあったでしょ。そこで新聞を買って、日付を確認して、まさしく100日後だと確かめた直後、店の外から急ブレーキの音と、ドーンってものすごい音が聞こえたんです。飛び出してみると、事故が起きていて、道の真ん中に、はねられた人が倒れていました」
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